ただの腐れ縁も

ここで終わりかと思うと





寂しいのだ










未来   1










最初は、小学校一年生。
同じクラス、隣の席。
出席番号関係なく先生が決めた席だった。
小学生とは無邪気なもので、普通に喋ったりした。

結局、小学校三年生ぐらいまではそんな調子。





変化が起きたのは小学校四年生。
可愛い転校生ちゃんの登場。
それまでは、なんとも思ってなかった。
だけど、ちゃんに取られたと思ってからは意識してしまった。


しかしそれは、親友として。


一緒に遊びたかっただけ。
その時は本当にそれだけだった。
その僅(わず)かな変化が更なる変化を呼んだ。





小学校五年生。
異性を意識するお年頃。

五年間連続同じクラス。
七回席替えして、六回も隣の席。

全く意識していないとは言えない。
学校で話す回数は減らない。
でも、下校中とか登校する時とかは?
当然の如く、一緒にいる時間は減った。





小学校六年生はクラス替えがないから、当然同じクラス。

ちゃんは五年生が終わってから引っ越した。
桃に『告白』してから去った。


爆弾投下。


桃の返事はお間抜けだった。


ちゃんも好きだけど、ちゃんのほうが好きだな。』


何か、アホらしくなった。
桃にとってはその程度か、と思えた。
だから、親友のまま。

ちゃんは当然泣いた。
よっぽど自信があったらしい。





中学になっても同じクラスだった。
3年間ずっと。

桃はカッコよくなった。
テニス部に入って、レギュラーになった。
テニスをやってる時の姿は、生き生きとしている。
誰もが気に留(と)めるパワープレイ。

途轍(とてつ)もない人気者。
誰にでも笑顔で接するのは更に人気を煽るだけだった。



それに引き換え、私は?
私は何も変わらない。

成績は中の上。
運動神経は普通。
スタイルと顔は平々凡々(へいへいぼんぼん)。
性格は良くもなく悪くもなく。
友達は多くはない。

そんな私は桃の親友。
男とか女とかそういう概念は置き去りにして……。
小学校からの付き合いだしね。



そう言い聞かせてきた。



でももう、その必要はないんだね……。





「引越し?」
「そう、ちゃんが卒業したらね。」


突然知らされる重大な話。
今は既に夏休み。

高校受験なんて考えてなかった。
当然、青学の高等部に進むもんだと思ってた。
そして、必然的に桃と同じクラスになるもんだと思ってた。


未来予想図ガ
全テ崩レ去ッタ


無常にも、時間だけが私を置き去りにして進む。

高校は青学の先生方が推薦してくださる事になった。
入試は受けなくて済んだ。
誰にも言わずに引っ越す事にした。
涙の別れなんて望んでないんだから……。

無常にも、時間だけが私を置き去りにして進む……。





〜?」


私に呼びかける声。
聞きなれた声。
もうすぐ聞けなくなる声……。


「聞いてんのかよ、!」
「聞いてるって……。」


卒業式まであと三日。
あと少しで終わる。
楽しかった日々も全て……。
そう、全て……。


「あと少しだなぁ。」
「そうだね。」


まだ桃は知らない。
私が引っ越すことも、何も……。

放課後の教室で二人きり。
何があるわけでもないのに、二人で語らう。


「そういやぁ、中学校生活最後になんかやろうって前に言ってたよな?」
「うん、言った。」


夏休みが終わった時に桃に言った。
卒業式の後に、何か思い出になる事をしようって。

私がやりたいことは一つ。
だから、桃も巻き込んでやるんだ。


「卒業式の三日後って、確か二年生以下は授業あったよね?」
「ああ、確かな……って、何企んでんだ?」


何もまだ教えてあげない。
ただ、桃の記憶に焼きつく事をしてやろう。

私の机を挟んで正面にいる桃の顔を見上げる。
口元に手を当てて可愛らしく一言。


「ひ・み・つ☆」
「怖っ!!」


後退りする桃を尻目に、笑顔で続ける。


「その日は、私服で青学中等部校門前に夜の11時に集合!」
「いや、だから何なんだよ?!」


桃の目の前に指を一本ビシッと立てて言ってやる。
絶対来なくちゃダメだよ!
と一言付け足して、自分の鞄を持って外に出る。
後ろから掛けられる声も無視して走る。
走って家に向かう。
振り返らない。


振り返れない……。


振り返ったら、桃の顔を見たら……泣いてしまう。
今まで我慢した分が、全て流れてしまう……。


ここに居られるのは、あと一週間と少し……。
それまでに……それまでに……。










next





あとがき+++

びっ、微妙……。
あ、あと一・二話ですから……。
悲恋ではないです……。
嘘ではなく。

桃ちゃんにした理由は……気まぐれ(苦笑)
そういえば、桃ちゃんいないなぁ〜ってな感じです。
はい、適当です……ごめんなさい!!
続きも読んで頂けると嬉しいです……。

by碧種


03.12.16