いつも、テニスコートから聞こえる音
それは
それは、私の好きな……
sweet GIRL's side 1
今週も調理室の前にやってくる。
『料理部☆毎週木曜日に活動中!!』
今日はカップケーキを作っている。
オーブンからは甘い匂いが漂ってくる。
「あ、大石君!」
「こんにちは、さん。」
大石先輩だ。
先輩ととっても仲がいい大石先輩……。
毎週木曜日、部活があるたびにここに来る。
窓の前を通って先輩と話す。
きっと大石先輩の目的は先輩。
「せ〜んぱい!カップケーキ焼けましたよ。」
「あ、出来た?」
小走りで先輩の側に近づいた。
窓越しに隣にいるのはレギュラージャージを着た大石先輩。
爽やかで優しい先輩。
青学テニス部のレギュラーで、ゴールデンペアの片方。
本当にテニスが上手い。
大石先輩のほうを見て挨拶をする。
「あっ。こ、こんにちは。」
「こんにちは。」
顔が、熱い。
私は赤面症で人見知りが激しい。
去年から毎週のように先輩が来てくれるので、やっと話すことが出来るようになった。
「ちゃん、大石君にケーキあげたら?」
「えっ?!で、でも……。」
私が作ったケーキを乗せた籠を持っておろおろする。
どうしよう。
大石先輩はたぶん先輩のことが好きなんだよね?
私が作ったケーキなんて嬉しくないよね?
本当にどうしよう。
「気をつかわなくていいんだよ、さん。」
「へ?」
「俺もう練習に戻るし。」
あ、折角大石先輩に私の作った物を食べてもらえるチャンスだったのに……。
やっぱり先輩のことが好きなんだよね。
じゃあ、と言ってその場を離れようとした大石先輩のジャージの袖を掴んでしまった。
「おっ大石先輩!!」
「ん?なんだい?」
こうなったら渡すしかない、と思って左手にケーキを乗せて差し出す。
大石先輩はとても驚いていた。
「これは……。」
聞かれて、自分のやったことが恥ずかしくなってきて、一言しかいえなかった。
「練習頑張って下さい!!!」
先輩の手にケーキを渡して、そのまま逃げるように調理室の奥へと走った。
「はぁ。」
どうしよう。
勢いで渡しちゃった。
籠に乗っている残りのカップケーキを見る。
程よく焼き色が付いていて、とても美味しそうだ。
そりゃ自信がないわけじゃないけど……。
窓のところではまだ大石先輩と先輩が話している。
やっぱりお似合いだ
別の意味で自信なくしちゃうよ。
本当は毎週笑顔で落ち着いて話したいと思って、努力してるつもり。
だけど、上手くいかない。
焦っちゃって、言葉が出ない。
そしてチャンスを逃す。
そんな繰り返しは、もう終わりにしたいと、そう思っているのに……。
next
あとがき*
大石君のヒロインちゃんverです。
面白いんで、作っちゃいました(笑)
後半の方も楽しんで書きたいと思います。
ではでは、後半もお楽しみ下さい♪
by碧種
03.08.25