一ヶ月経っても噂は止まず

ますます状況は悪化した……










見守る者  4










一ヶ月経った。

噂は止まるところを知らず、学校中に色々な形で広がった。


「はぁ……。」


ため息も吐きとぉなるわ。

跡部は女遊びを止(や)めへんかった。
は跡部と会うこともせぇへん。

今んとこ、状況は最悪や。

跡部はあの日以降、何もゆうてくることはあらへん。
たぶん、自力で確かめてんとちゃうか?
本心を……。


……。」
「何か?」


久しぶりに跡部がんところに来よった。
はまるで相手にせぇへん。
リアクションの薄さに、跡部が眉根を寄せた。

あーあ。
そないな表情しとったら、どこぞやのヤツと同じになるで……。

何かを言いたそうに口を開ける跡部。


「っ………。」


それは言葉にならんと、空気に溶けた。
右手を握り締めて俯(うつむ)跡部。
は目線も合わせんで、どこか遠くを見とった。

すれ違い続ける二人。
こっちから見とると、もどかしぃて。


「用ないんだったら、帰ってくんない?」
「!!………ぁ。」


沈黙を先に破ったんはやった。
その言葉は外界を拒絶するように、教室に響いた。
跡部が僅(わず)かに呻(うめ)いたんが聞こえた。
それでも必死でその場に止まっとる。
眉間の皺(しわ)が増えとる。


「さっさと帰れ。」


の容赦(ようしゃ)ない言葉。
傷付け合うだけの言葉。
無感情に言っとるように見えるも、その言葉を受けとる跡部も同じ。
きっと同じだけ傷付いとる。


「帰れ。」
「っ…………。」


更に積み重ねられる言葉。
ただ拒絶だけの言葉。

言葉の間に積み重なってく沈黙。
息苦しさで狂ってまいそうな、重苦しい沈黙。

その間、何度も足掻(あが)いていた跡部。
言葉になりそうでならへんかった、その気持ちが……。
やっと跡部の口を動かす。


「今も……。」


小そうて掠れて、消え入りそうな声が出た。
の表情に僅(わず)かな疑問が浮き出る。

"何が言いたいんだ?"と。


「今でも……が好きだ……。」


想像以上の時間をかけて、ようやく出た言葉。
それでもはほとんど動揺せぇへん。
瞳に浮かぶ色が僅(わず)かに変わっただけ。


「帰れ。」
「っ!!………ああ。」


すぐに元の表情に戻ったが言った言葉は、また傷つける。

跡部を。
そしてを……。

冷たい台詞に跡部が去ってゆく。
その瞳には確信があった。

"必ず信頼させる"と。










跡部が教室を出ると、普段の喧騒(けんそう)が戻ってきた。


「何でなの……。」


その喧騒(けんそう)がの呟きも掻き消してまう。
小そう呟かれた疑問を……。
悲しみや苦しみも……。


「こっちが聞きたいわ。」


俺の呟きも誰の耳に届くこともなく、消えゆくんや。

そう。


誰に見られることもなく、誰に触れられることもなく……。
永遠(トワ)ノ痛ミヲ、俺ハ抱エ続ケルンヤ。
変わることもなく……。
永遠(トワ)ニ痛ミヲ、俺ハ抱エ続ケルンヤ。
変われる訳もなく……。

消えゆく。


俺は………。


俺の想いは………。










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あとがき+++

徐々にネガティブ風になってきました、見守る者(笑)
悩める忍足君でございます。

なかなか終わる様子を見せない見守る者も、あと少しですねぇ。
計画性0なもので、前置きが異常に長くなったり……。

今回はダークにダークに……。
だけど私自身は元気ですよ?
次はさらりと爽やかに。
そして、後味爽やかな終わりにしたいと思います。

もう少しだけ、管理人の気まぐれに付き合ってくださると嬉しいです。

by碧種


03.12.07