誰と居ても、お前と居た時ほど満たされることはなく
誰と話しても、お前と話していた時ほど楽しくない
そして……
誰に触れても、お前とただ一緒に居た時ほどの安心感は得られない
ネガティブ
お前が口を利いてくれなくなってたった一ヶ月。
そう、たった一ヶ月。
でもその一ヶ月は俺にとっては、今までになく苦しかった。
陰鬱(いんうつ)な気分を取り払う為にいろんな女と遊んでみた。
そう、お前とつき合う前みたいに……。
でもだめだった。
気分は乗らない。
楽しくない。
つまらない。
はっきり言って、うぜぇ。
一ヶ月かかって解ったことは、やっぱりお前じゃないとダメなんだということだけで……。
お前だけなんだよ、……。
「……。」
「何か?」
お前が浮気だと思った相手はただの従姉妹(いとこ)なんだよ!!
浮気じゃなかったんだ。
ただの親戚付き合いだったんだ。
「っ………。」
「…………。」
そんな事言っても信じてはくれないんだよな。
でも、本当にお前だけなんだ。
信じて欲しい。
解って欲しい。
また、一緒に居て欲しいんだ。
……。
「…………。」
俯いて黙り込む。
真実を知って欲しい。
だけど、言葉が出ない。
「用ないんだったら、帰ってくんない?」
「!!………ぁ。」
足は止(とど)まる。
本当に、本当に言いたいことがあるのに……。
"今でもが好きなんだ。"
嘘偽(うそいつわ)りのない言葉があるのに。
"浮気はしていない。"
伝えたい言葉があるのに。
"愛している。"
何で言葉が出ないんだよ!!!
「さっさと帰れ。」
「…………。」
の冷たい言葉が、俺の弱い気持ちに深々と刺さる。
身体の一部が抉(えぐ)られる様な……。
くそう!!
なんでこういう時だけ声(ことば)が出ないんだよ!!
くそっ。
弱虫な俺に嫌気がさす。
いつもの強気はどこへ行ったんだよ。
情けない。
本当に惨めだ。
こんなんだから、ダメなんだ。
いざというとき何も出来ないから……。
いや、何もしないからっ……!!
「帰れ。」
「っ…………。」
頼む、頼むからっ!!!
「今も……。」
「?」
「今でも……が好きだ……。」
ようやく言えた一言は、僅(わず)かにお前の瞳を揺らすだけで……。
その一瞬の動揺が治まると、口から出たのは冷たい一言。
「帰れ。」
「っ!!………ああ。」
一言だけの前進。
一瞬だけの動揺。
それだけでも、そんな事でも……。
少しだけの接近でも、今は十分だから……。
いつか
必ず
また
お前の隣に……
お前の隣に戻ってもいいか?
next
あとがき+++
晴れて表に昇格のネガティブです。
お気づきの方も多いかと思いますが、元は[Deep]に収納されていました。
昇格理由は
1.ハッピーエンドだから(バッドエンドを変わってくれたものもあるから)
2.氷帝で表にあるものがあまりにも少ないから……。
の二つです。
でもまぁ、話自体は変わってないんですけどね。
by碧種
03.09.15(Deepにup)
04.06.24(dreamに移動)