俺たちの関係は?
答えは簡単
ナイスコンビでしょ?
仲良し
休み時間に廊下に出れば……ほら来た。
私と同じ制服の女の子数名。
大体こういう時、女の子たちは2〜5人でやってくる。
「先輩……ですよね?」
「そうだけど何か?」
その後に続くのは必ず同じ言葉。
「ちょっとお話があるんですけど……。」
「あー、良いよ。何処で話聞こうか?」
「じゃあ、中庭で……。」
「はいはい。」
中庭の方へ向かう。
何となく目の端に私が呼び出される元凶が居た気もするけど、気にしない。
まぁ、元凶と言っても私にもアイツにも悪気はないわけで……。
仕方なく、女の子たちに連れられて中庭まで歩く。
話の内容は、聞かずとも予想がつく。
なんせ何回も同じ質問を投げかけてきた女の子たちが居た。
この子達もそうだろう。
中庭に着くと、彼女たちは何か言いにくそうに立ち尽くしていた。
はっきり言ってさっさと済ませたい。
だって面倒な上、私には関係のないことなんだから……。
「用件は何かな?」
「あっあの!」
女の子の一人が意を決したように顔を上げた。
「先輩は、向日先輩と付き合ってるんですか?」
内容はやっぱり予想通り。
女の子に呼び出されると、問われる内容はほとんど同じ。
付き合ってるの?
付き合ってるんでしょ?
如何思ってるの?
好きなんじゃないの?
好かれてるんじゃないの?
両思いなんでしょ?
...etc
そんな勝手な事を言ってくる女の子たちに、私は同じ返事を返す。
「それはないって。全然関係ないし、ただの友達だよ?私と向日は。」
「でも……。先輩たちすごく仲良いし、皆そう言ってます。」
「う〜ん。こういう場合本人が否定しても皆聞いてくれないんだよね。だから放っておくんだけど……。やっぱ広まりっぱなしか。」
困った事にこれが事実。
誰一人として信じてくれない。
私と向日がいくら否定しても逆効果なくらい噂は広まる。
いっそ、向日が誰かと付き合ってしまえばいいのに。
「じゃあ、先輩たちの関係って何なんですか?」
質問に答えようとして相手を見据える。
すると、その向こう側にすごく目立つ色の髪をしたヤツが近付いてくる。
うわー、何てタイミング。
来るなと念じる私の意志に関係なく、向日は私を見つけて近付いてくる。
ニコニコと笑顔を浮かべながら、事をややこしくする為だけに来た。
「あ、ー。何してんの?」
「あー。あんたのファンに答えてるの。」
「最近多いなぁ。で?」
「向日と私の関係が気になるとさ。」
「俺との関係?」
心の中で盛大な溜め息を吐きながら、向日の質問に答える。
おろおろとしている女の子たちが不憫(ふびん)で仕方ない。
私と女の子たちの空気を読む事もせず、あっけらかんと向日は答える。
「親友に決まってんじゃん。」
ケロリとした態度と軽く言った言葉に、女の子たちは固まる。
重ね重ね可愛そうな子達だ。
折角向日のことが大好きで、勇気を出して私に話しかけたのに。
どうしても知りたくて、向日の目を忍んで私をここまで連れ出したのに。
向日に見つかり、嬉しいけれど悲しいことを知る。
本当に向日の鈍さは罪というか、何というか……。
「でしょ?なのに皆、ねぇ。」
「俺んトコは……。」
「言いにくい。」
「ああ、だからか。」
上の会話、解りにくいでしょう。
訳します。
『でしょ?なのに皆信じてくれないしねぇ。』
『でも、俺んトコには来ないぜ?』
『それは向日には言いにくいからでしょ。』
『ああ、なるほど。だから俺んトコには来ないのか。』
という会話。
大抵の事は二言三言で通じてしまう。
最近ではアイコンタクトまで通じるようになる始末。
以心伝心というか、何というか……。
「あ、あのっ。ありがとうございました!」
女の子たちが逃げるように去って行った。
向日が来ると大抵の女子が逃げる。
そりゃあもう、疾風のごとき速さで。
恋する女の子の気持ちは分からないなぁ。
視線だけで見送って、向日に向き直る。
「んで、何用?」
「ああ、購買に行こうと思って探してた。」
ああ、きっとそんな事だろうと思ってたよ。
そうだよね。
購買行くときは一緒に行くって言うもんね。
中庭から購買までは案外遠くて、約10分。
女の子たちとのやり取りもあったことだし、念のため時計を見ると……。
「あっ、もう4限始まるじゃん!!」
「マジ?」
「走るよ向日!!」
「あ、待てって!!!」
こんなのが日常で、これ以外は考えられなかった。
友達、親友、友人。
それ以外に私たちの関係を表す言葉を持たなかった……。
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あとがき+++
仲良し、というお題を見て真っ先にガックンの顔が浮かびました。
自然と女の子と仲良くなってそうだなぁ、というイメージ。
そして、はじめましてガックン。
ようやく君が主役だ!
by碧種
05.01.26