ここには気高い城があった
何者にも侵されない
何者にも負けない
気高い城と
気高き思いを抱いた兵士たちが居た
Silver Link −廃墟と化したコノ場所で−
城下町を歩いて抜ける。
後ろには目立つ赤い服を着た少年。
きょろきょろする様子も無く、ただ静かに私の後ろについてくる。
正直、この少年が何者かなんてどうでもいい。
例えば君とやらがシードの部下で、逃げ切った者だったとしてもだ。
きっと……私は……。
僕の前を颯爽(さっそう)と歩く彼女は、その間一言も話さなかった。
時折チラチラと見える銀のチェーン。
それを隠すように垂れている、肩に触れるか触れないかの長さの銀髪。
僕に必死で訴えかけた瞳と同じ紅い目は、強がっていた。
違う。
強がってるんじゃなくて、そういうんじゃなくて……。
何かが違った……。
人気がなくなって、風の音だけが聞こえる。
少し高台となっているこの場所は、風の通りがこの街のどこよりもいい。
そして、城下町と緑と湖が広がっている風景が鮮やかに見える。
『凱旋(がいせん)のときのここからの風景って最っ高だよな〜。』
『ああ。良いな。』
『二人とも、不謹慎なことを言わない!!』
全てがなくなっても、この場所に来ればあの声が聞こえてくる気がした。
全てが消えても、思いだけは残っているのだから……。
ふと正面を見ると、そこに誰かが居る事が分かった。
青っぽい動きやすそうな服。
風に揺られている色素の薄い、長い髪。
手に持っているのは棒。
確かにどこかで見たことがある姿だった。
「ジョ、ウイ……?」
ボソリと呟くと、その人影がこちらを向いた。
そして、目が合ってしまった……。
「さん……。」
寂しげな瞳で私を見ていた。
その後に、私の後ろを歩いていた少年の方を見る。
大して驚いた様子もなく、もう一度私のほうを見た。
「お久しぶりです。」
「そうね……。」
どうして彼が生きているのか。
どうして、シードのほうが死んでしまったのか。
どうして二人は帰ってこないのか……。
全ての疑問は消化されないまま、私は一人何かを確信した。
と名乗った少年は、ただ黙ってジョウイとのやり取りを見ている。
ジョウイは私との距離を縮めてきた。
「いつ……。ここに戻られたんですか?」
「二、三ヶ月前の満月の日よ。」
「そう……ですか。」
途切れ途切れの会話。
果たして会話が成り立っていると言えるかどうかも分からない。
ただ、ぎこちない……。
「ねぇ……。」
「何ですか?」
「どうして……。」
どうしてアナタはここに居るの?
返事は返ってこなかった。
ジョウイ君は俯(うつむ)いてしまった。
短い沈黙の後、不意に後ろから肩を叩かれた。
後ろを見ると、君がこっちを見ていた。
「僕なんです。」
「え?」
よく分からない。
何が彼の所為だと言っているのかも、どうしてそんな事を言ったのかも。
分からない……。
「ジョウイを連れてきたのも……。」
弱々しい笑顔を向けてくる。
言葉を濁らせたのは一瞬。
次の瞬間に聞こえたのは、最も聞きたくない事だった。
「シードさんを倒したのも、僕なんです。」
「何を言って……。」
冗談でしょ?
そう言おうとした言葉は、彼らの表情を見て詰まった。
「というは知り合いの名前で……本当の名前はです。」
「……?」
「はい。です。」
その名前を、私は何度も聞いた事がある。
期待とか、希望とか。
憎しみとか、恨みとか。
いろいろな感情が込められた声で叫ばれていた。
そう。
それは……。
ハイランドを滅ぼした軍のリーダーの名。
新たな国を建国する前に行方を眩ました少年の名。
ジョウイ君の親友の名。
ありとあらゆる意味を持ちながらも、それらはただ一人の少年を指している。
……。
彼がそうだったのか……。
next
あとがき+++
ようやく第四話〜。
たぶん十話以内に終わるでしょう。(あくまで予想)
さてさて、ここから先が私が書きたかった話だったりします。
何が書きたかったかといいますと……。
シードさんの過去捏造(ねつぞう)話ですv
何と言ってもこの人、婚約者がいらっしゃるという噂があります。
『じゃあ、婚約者をヒロインにしちゃおう!』という発想で、話を考え始めて早半年。(始まりは04年の正月(苦笑))
ようやくここまで話が詰まってきました。
シードさんたち、死ぬ場面ハッキリと明記されてないじゃないですか。
更に言うなら過去の設定もハッキリしないじゃないですか。
いじり易いのなんのって(笑)
楽しんでますよ、とっても。
なので、皆さんも楽しんで読んでください。(死夢でこんなこというのもなんですが……)
by碧種
04.07.20