いつもジョウイの左右に控えていたシードさんとクルガンさんを倒した
謁見室まであと少しだったあの時……
『おい………。』
息も絶え絶えにあの人は
遺された者へ
遺された物を届けるよう
僕に
言った……
Silver Link −遺されたモノ−
同盟軍の皇都制圧が終わり半年が経った。
僕は国を治める事を選ばず、親友のジョウイとお姉ちゃんのナナミの二人と旅をする事を選んだ。
今はまだルルノイエ近郊のサジャの村で旅の準備をしている。
そして今……。
旅立つ前にやらなくちゃいけないことが一つだけ残っていた。
赤黒い布に包まれた掌サイズのモノ。
それはとても大切な預かり物だ。
それを確認してから道具袋の中に入れる。
これから返しに行かなくてはならない。
本来もっているべき人に……。
「ジョウイ。」
「ん?なんだい、。」
何も知らないジョウイが振り向く。
頭の上にクエスチョンマークを浮かべて近付いてくる。
手元には僕が持っているのと同じ様な荷物があった。
「ルルノイエに行かない?」
「えぇ?!な、何を考えてるんだい、?」
いつものようにリアクションが大きいジョウイに一言言う。
「シードさんからの預かり物、返さなくちゃ。」
馬で半日駆ける。
夕方にサジャを出て、夜は大木の下で野宿した。
赤い炎をジョウイと並んで見る。
サジャを出てから会話は一度もない。
ジョウイは思いつめたような表情をしていた……。
「僕はここから先、行けないよ。」
ルルノイエが見えるところまで行くと、ジョウイは馬を止めた。
昨日から何かを考え続けているジョウイは何か言いたげだった。
でも、結局何も言わないままだった。
「僕は裏の方からルルノイエ城跡に行く。そこで待ってるよ。」
「分かった。行ってくる。」
「うん。」
会話を終わらせるとジョウイは馬を翻して、僕とは違う方向に向かった。
馬に載っている姿は、普段のヘタレっぷりを感じさせないくらい勇ましかった。
少し間を空けて僕も馬を駈けさせる。
『…っていう。女だ。』
目指すのは、ルルノイエ一番の銀細工のお店。
探すのは銀の髪を持った美しい人。
『俺は……
愛してる。』
猛将と呼ばれたシードさんが……。
唯一愛した人……。
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あとがき+++
あー、暗いっ!!
だけど短い……。
今回は2主サイドです。
お届け物屋という事で(笑)
いくつかの視点を織り交ぜながら書くつもりです。
さて、誰の視点が出てくるでしょうか?
ほとんど予測可能だとは思いますが、ね(苦笑)
by碧種
04.05.22