これで……

終わりだっ!!!










悪夢の二月十四日(バレンタイン)防衛戦  in 山吹中学










の計らいで部室棟から脱出した私は、学校の外壁に沿って走った。
テニスコートを横切り、武道館に入った。
そこで、朝置いていったカバンと制服を回収して、食堂へ向かう。

からのメールによると、4時限目は教員が風邪で自習になり、クラスの大半が食堂に居るとの事。

食堂に入ると、すぐにが手を振ってくれた。


、お疲れ。」
「ナイスアシスト、。マジで感謝するわ。」
「なーに言ってんの。私との仲でしょ?」


静かなうちに食事を始める。

昼食は、全校生徒が食堂に集まって食べるので、いろいろな人と知り合えるチャンスだ。
けれど今日ばかりは迷惑でしかない。

目の前に並べられた食事を、自分の出来る最高速度で食べる。
周りの友人たちも事情が分かっているから、会話に加わらないことも了承済み。
最後にドリンクを一気飲みして立ち上がった。


、出陣してまいります!!」
「はいはい。頑張って逃げ切りなよ。」
「もちろん!」


拳をの方に突き出してから食堂を早歩きで出た。
食堂を出て行く私と対照的に、食堂に向かってくる生徒もちらほら見える。


「これは……勝負時かな?」


小さく呟いて、足をグラウンドに向ける。
カバンの中を探り、シンプルなラッピングの袋を取り出す。

青のストライプというバレンタインとは思えないシンプルなラッピングだけど、これが一番私らしいのだろう。
中身は亜久津と千石が欲しがっている、私の手作りお菓子だ。
もちろん、室町君や檀君にあげたチョコが義理でこれが本命……というわけではない。
どっちも義理チョコだ。

新校舎を越えて、グラウンドが見えてきた。
グラウンドでは亜久津と千石のクラスがサッカーをやっている。
もう授業時間も残り僅かなので、片付けに入っている人も居るみたいだ。


「おー、頑張ってるねぇ。」


銀とオレンジの髪の毛は、やたら目立つ。
体育の授業ともなると、その運動神経の良さも相まって尚更目立つ。


「悪目立ち……って訳でもないか。」


素直に格好良いと思える彼らの姿。
だけど私にとっては天敵みたいなものだ。

片づけを始めた彼らの視界に入るように態と近付く。


「あ、ちゃん。」
っ?!」


テニスで鍛えられた運動能力を利用して、ものすごい速度で近付いてくる。
そんな彼らに青い袋を見せ付けた。


「さて、これは何でしょう?」
「まさか……。」


二人は僅かに乱れた息を整えながら、半信半疑で私の持っているものを見た。


「正解は、ちゃんお手製クッキーです。」
「……もちろん俺にくれるんだよね?」
「誰がてめぇにくれてやるか。俺に決まってるじゃねぇか。」
「まぁ、私の話をお聞きなさいな。」


自信満々に言い、今にも殴り合いを始めそうな二人に待ったをかける。

本命に見えなくも無いお菓子を巡って喧嘩されたんじゃ、こっちも堪ったもんじゃない。
さらにどっちかが怪我をしたら、もう一方は停学処分になるかもしれない。
それはさすがに困るから、最後の作戦を発動する。


「亜久津と千石はテニスで勝負してくださいな。」
「んでだよ。」
「勝った方にこれをあげます、って事。」
「……最高じゃねーの。」





作戦その4。
二人をテニスで勝負させる。





勝負に気がそれてるうちに、私は帰らせて頂きますけどね。

やる気十分の二人をテニスコートに向かわせる。
当然のことながら私はテニスのルールが分からないから、審判はテニス部の人々に任せる。


「亜久津には渡さないぞ!」
「上等だ。」


白熱する二人を尻目に、私は帰宅した。





クッキーの行方は

神のみぞ知る……















あとがき+++

ギャグ全開のバレンタインデーシリーズその3です。
今回はALLキャラというよりはVSになりましたが、いかがでしょうか?

バレンタインデーに間に合わず、申し訳ない限りです(汗)


by碧種


07.02.18