目の前に立ちはだかる疑問
どこまで友達?
どこから恋人?
君は 俺の 何?
恋と愛との曖昧な境界線
どこまで友情か、どこからが恋慕か、どこまでが愛情か。
そんな境目は俺には見つけられない。
だから、に対する自分の感情の名前も知らない。
悶々と考えながら昼休みは生徒が少ないテニスコート脇の空き地で弁当を食べる。
授業の間のこの時間に、不二は手塚に用事があるとかで居ない。
一人取り残されたから、思考の海にダイブってわけだ。
「英二〜。」
「ん、にゃに?」
俺の悩みの種、、がいつの間にか目の前に立っていた。
はとっても不思議だ。
彼女はいつでも笑顔で、いつでも神出鬼没で、いつの間にかそばに居る。
それから不思議と俺を和ませる。
そんな彼女は俺の顔面を指差して笑いながら言った。
「何考えてるか知らないけど、顔が百面相しとりますよ。」
「え、マジで?」
「うん、マジで。見てる方は面白いけど顔に出すぎじゃない?」
俺が悩んでいることも知らないだろう俺の想い人。
俺が百面相している原因そのものであることを知らない彼女。
何も知らないだけに、無邪気な笑顔で俺に近寄ってくる。
また考え始めると、今度は眉間を衝かれた。
予想以上の威力に額を押さえる。
「っ!」
「ほら、また。変な英二。」
「い、痛い。」
半分涙目になっている俺を見てはクスクス笑う。
その笑い方は他の奴らとは違って綺麗に見える。
一瞬見とれてしまい、頭を振る。
駄目だ、駄目だ!!
の笑顔に見とれちゃ駄目だ!
どうして駄目か。
それは数週間前に不二に忠告されたからだ。
英二って分かりやすいよね、と。
さらにもう一言、さんが気付かないのが何より不思議だけどね、と。
要約すると、英二がさんを好きなのはモロバレだよ、ということだ。
そのときははそんなんじゃない、と答えた。
だけどそれからというもの、に視線が行く度にハッとする。
その眩しい笑顔に。
その可愛らしい仕草に。
そのという存在に。
そして数日後には、まるで不二に暗示を掛けられたかのように、の事が好きになってしまっていた。
いや、不二の所為じゃないかもしれない。
目で追っていたくらいなのだから、本当は前から好きだったのかもしれない。
だけど自覚したのは不二の言葉のおかげだ。
まぁ、感謝する反面、余計なお世話だと思ってもいるんだけど。
考え事をしながら上の空で、当たり障りの無い話を続ける。
「今日は一人?はどうしたの?」
「それが、は野暮用とかいって、一人でどっか行っちゃってさぁ。」
「置いてけぼり?」
「そ、置いてけぼり。そういう英二も不二に置いてかれたの?」
「そーだよ。」
おどけた顔して笑うの顔も、ちょっと可愛い。
その笑顔を見つめすぎない程度に楽しんだ。
俺と、君との関係は何?
楽しそうに話す彼女に、こんなことを聞いたらどんな反応をするだろう?
困るかな?
驚くかな?
それとも、"友達"って即答する?
"友達"と即答された時、俺自身立ち直れないことに思い当たった。
それから、きっとは俺のことを"友達"と思っていることにも、だ。
こんな考えにしかたどり着かない時点で、普通はあきらめるんだろうか?
この感情は、恋愛感情以外の何物でもない、と。
だけど俺は、そういう風に結論付けたくない。
だって、恋愛感情って結論をとると、友情が成り立たなくなってしまう。
友情が成り立たなくなると同時に、今まで築き上げてきた心地良い関係が崩れてしまう。
その後に出来るのは、新たな関係か無関係のどちらかだ。
今の関係を捨ててしまう勇気なんて、俺にはない。
あるはずがない。
「あれ?は昼飯食べた?」
「んー、一応食べたよ〜。」
「そっか。」
質問も返事も上の空。
だけどどれだけ考えたところで、何の答えも出ないんだろう。
俺と彼女の関係については。
特に俺の悩みに関しては。
「あのさ〜、英二。」
「ん?」
不意にかけられた言葉に、表情が表に出ないよう必死で返事をする。
無邪気な笑顔で話しかけてくる彼女には、悪意なんてものは無いんだろう。
無知は最大の罪だとはよく言ったものだ。
そして、何も知らないであろう彼女は、満面の笑みでの宣(のたも)うた。
「私、好きだからね。」
「にゃ?」
「英二の事、好きだからね。」
「ぇえっ?!!」
こうして今日も
曖昧な境界線は、俺の目の前に在る
あとがき+++
拍手用の話と同じような違うような(笑)
とりあえず、菊猫です。
だいぶ長いこと夢を書いてなかったので、リハビリ作になってしまいました、と。
やっぱ難しいですよね、いろいろ。
by碧種
10.03.27