瞬間……
何が起きたか理解できなくて……

ただ……



どうして真っ暗になったのだろうと……





思った










ガードマン  3










意識がブラックアウトして、もう一度目が覚めたら、天井は白かった。
その白さがやけに目に染みて、手を翳(かざ)そうとした。
手を動かそうとして、手が何かに縛られたかのように動かないことに気付く。


「あ、れ?」


出した声もやけに掠れている。

状況が良く解らない。

上手く身体が動かない。
まるで、何日間も動かしていなかったかのように。
思考回路も鈍っているようだ。

ゆっくりと、慣らすように身体を起こす。
今度は動けた。

僅かに頭痛がするが、気にしない。

動かなかった右手を見てみる。
誰かの手が、俺の手を握っている。





誰……か?





……ちゃん?」





声もしっかりと出た。

確かにそこにいるのはちゃんで、朝見た姿と変わらない。
俺の手を握ったまま寝ている。
でも、ここは確かに病室のようなところで、俺は寝ていた。
何日間くらい寝ていたんだろうか。
何時間とかじゃなさそうだし……。





突然降りかかってきた不安。





思わずちゃんの暖かい手を握り返す。
俺の腕には点滴。
たぶん、腕の温度は下がっているだろう。

ピクリ、と寝ていたちゃんの手が動く。


「せん…ぱ、い……。」


目は開いていない。
寝言か……。





今確実に分かっていることは。





俺は長いこと寝ていて、それをちゃんが心配してくれたということだけ。

寝ている彼女の手をまた握る。
今度は起きないようにそっと……。





また頭痛がする。
気にしない。










視界が明るくなる。
寝ちゃったみたい。

握ったままだった手を動かさないように起き上がる。


「お姫様のお目覚めかな?ちゃん。」
「え?」


視線を下から前へ動かす。
そこにはいつもの陽気な笑顔があった。
オレンジ髪がトレードマークの彼の笑顔が……。


「千石先輩!!」










また、手が動く。
今度は瞼(まぶた)も動く。

あれ、起こしちゃったかな?

ちゃんの漆黒(しっこく)の髪が布の上を滑る。
ゆっくりとした動作で、握った手だけを動かさずに起き上がる。


「お姫様のお目覚めかな?ちゃん。」
「え?」


驚きに目を見開き、俺のほうに顔を向ける。
俺の顔を確認すると、泣きそうな顔になった。


「千石先輩!!」


椅子から立ち上がる。
そして、俺に抱きついて……。






泣いてしまった。





「あー、ちゃん?俺のために泣いてくれるのは嬉しいんだけどね〜。」
「っぅ、ひっく。嫌です!!」


何が、と聞くとキッと睨(にら)んで一生懸命言ってきた。

しっかりと服を握っている。
まるで子供みたいだ。


「もう、千石先輩から離れるのは嫌……です。」
「えーと……。」


どうリアクションすればいいんだろうか?
だいぶ混乱しているらしいし。
俺が困っていても気にせず話し続ける。


「千石先輩が好きなんです!だからっ!?」


好きだという言葉に反応して手が動く。
握られっぱなしの手を引いて、彼女をさらにベットに引き込む。
反対の手を顔に添える。


「本当に?」
「……は、い。」


今までになく真面目な顔してんだろうな、俺。
ちゃんは動けずに顔を赤くして固まっている。


「俺も、好きだよ。」
「!!」





俺は君だけを見てたよ……















あとがき+++

甘い……。
甘すぎる!!
キヨ、何で君はそう甘い話になるように動くんだい?(書いたのは私ですが(笑))

因みにキヨ君は三日間寝込んでいました。

by碧種

03.08.21







○反省会○
キヨ「あのさあ……。」
碧種「何だい?キヨ君。」
キヨ「何で俺、入院させられてんの?」
碧種「文句あるのかい?」
キヨ「ヒーローが怪我したらかっこ悪いでしょ?」
碧種「でも、役得はあったでしょ?」
キヨ「・・・・・・。」

終わっとけ!!