彼のお得意技は
パワー全開ダンクスマッシュ


だけど今日は・・・・・










HAPPEN!?〜桃城ver〜










誰でもいいから、桃城を止めて下さい。

そう思いながら、フェンス越しに試合を見る。
自分から止まる訳がないアイツを、誰か止められたらと……。


「何か今日の桃ちゃん先輩、迫力がないね。」


そう言ったのは一年の後輩だったっけ。
エージも、秀も不二も気付いてるんでしょ?
止めてあげてよ!!
桃城は昨日から風邪でふらついてたんだよ。


「エージ。」
「にゃにかにゃ?。」
「桃城、ヤバイよ。」


うん、知ってるよと呑気(のんき)に言うエージ。
知ってるなら何で止めないの?
アイツの戦い方がとっても痛々しい。
汗をいつも以上にかいて、呼吸も荒い。
フットワークも重い。


「だってもも、止めても聞かなかったんだもん。ラケット持つのも辛そうだったから、大石と一緒に止めたんだけどにゃ。」
「嘘〜……。止めてもダメだったの?」
「うん、そーゆーこと。」


馬鹿じゃないの?
何やってるのよ、本当に!

桃城は今朝から調子が悪かった。
表情が浮かない、食欲がない、パワーが続かない。
試合を始めた直後は何も無かったかのようにプレーしてたけど、今はとても辛そうだ。


「相手が悪かったね。」
「そんな。」
「そうだよな、相手が海堂なんて。」


不二の言うとおり相手が悪い。
まさかライバル(?)の海堂と当たるなんて。

これだから熱血漢(ねっけつかん)は・・・。
自分が駄目になってからじゃ遅いのに。

当然試合は海堂が優勢。
桃城は普段ならダンクスマッシュをかますような球でも普通に返すのがやっとってとこ。


「これじゃあ桃の完敗になるね。」
「そう…だね……。」





試合は0−6で海堂の勝ち。

当たり前か・・・。

そう思ってフェンスから離れようとしたとき・・・。


「桃!!」
「桃ちゃん先輩!!」


テニス部のメンバーが叫ぶ。
振り返るとコートで桃城が倒れていた。


「もも……しろ?」


無言でコートに入る。
誰も私を止めようとしない。
桃城は汗だくで青ざめて倒れている。


「あ〜あ。無理するからぁ。」
「バカじゃねーの?」


エージと海堂の言うとおりだ。
体調悪いくせにテニスなんてやるから、こんな事になる。
乾が桃城に近づく。
私は桃城の横に座り込んだ。


「乾、桃城は大丈夫そう?」
「・・・・・あんまり良くないな。」


心拍数を測ろうとして手首を掴んだ手は、仕事を果たさずに離された。
どうしたんだろうと思って、同じように手首を掴む。


「・・・・・・。」
「良くないだろ?」
「う、ん。」


心拍数は数えるまでもない。
かなり速い。
ヤバイ、相当ヤバイ。
早く涼しい所に連れて行かないと、危ないかもしれない。


「海堂とエージ、桃城を早く運んであげて。」
「ああ、そうだ。大石はと先に保健室に行って説明しておいてくれ。たぶん、原因は風邪かなんかだ。安静にしてれば治るだろう。」
「そっ……か。風邪…ね。」


秀と二人で急いで保健室に行く。
保健の先生に説明して、ベットの用意をしてもらう。
そうしているうちに、海堂とエージが桃城を担いでくる。


「大丈夫……かな?」
「ダイジョブ、ダイジョブ。桃がこんなことでくたばる訳ないっしょ!」


エージの言葉に少しだけ元気をもらう。

人の事こんなに真剣に心配したの、初めてかもしれない……。

そんな事を考えながらベットに寝ている桃城の顔を眺める。
テニス部の面々は練習試合が残っているからと言って、テニスコートに戻った。
だから、保健室には先生と私と桃城の三人しかいない。










……先輩?」
「桃城……。」


空が段々オレンジ色に変わってきた頃、やっと桃城が目を覚ました。
徐々に視界が霞(かす)む様な気がするのは、気のせいだろうか?
気のせい……ではなさそうだ。
目の前には、ビックリした桃城の顔がある。


「どっどうしたんすか?先輩!!」
「どうも、しないけど。」


十分に寝て少し回復したのか、桃城は元気だ。
それを見てホッとしている自分がいる。
ああ、良かったと。


先ぱ〜い。大丈夫っすか?」
「桃城こそ、倒れたけど大丈夫?」


聞くまでもなく大丈夫だろう。
話してて、苦しさが伝わってこないから。
本当に、良かった。


「大丈夫っすよ。なんてったって先輩が看病してくれたんすから。」
「本当か?」
「ホントっすよ!」


笑いながら会話して、安心しきっている私。
何となく、幸せな感じがした。





「先輩。」
「何?桃城。」


部室から桃城の荷物を持ってきて、渡す。
ちょっと早いけど、手塚からOKをもらったから早退する。
少し顔が赤い桃城を見上げて訊く。
身長差、何センチあったっけ。


「一緒に帰りませんか?」
「いいよ。」


心配だしね、と心の中で付け足して横に並ぶ。





今日一日だけは、可愛い後輩のために一緒に帰ろう。















+−+あとがき+−+
さん最後まで読んでくださってありがとうございます。(感謝感激です!)
やっとこ桃色ver完成。
後はリョーマのみ!!

ヒロインについて全然説明がないので、補足説明。
現在三年生で、菊丸とは幼馴染み。(菊丸繋がりで大石とも仲が良い)
元マネだけど、二年のときに辞めてる。(だからコートに入っても文句を言われないと)
これくらいで、たぶん↑の話がわかるでしょう!

企画今月中に終わらせようと奮闘中。
残り日数少なすぎだよう!!

by碧種


03.07.31