ホンマの感情押し込めて
ただ相手の幸せを願っとった


これは嘘やない


ホンマもんの気持ちや










見守る者  6−エピローグ−










屋上の扉ん近くに体育すわりで座る。
相変わらず空を見上げて溜め息を吐く。


「俺って、ええ人やん。」


誰も居ぃひん屋上で、自嘲気味に笑う。

あかんわ。
笑われへん。


「情けないなぁ。」


少しずつ零れる言葉は、本心か?
いつまで頑張っとんのやろ……。

綺麗に晴れとる空を恨めしく思ぅて、眺める。
天気は晴天。
雲ひとつない青空。

この青空の下で、あいつらは仲直りしてんのか……。


「いっそ雨ならなぁ。」


いっそ雨なら、泣けるんやけどなぁ……。


「雨……降らんか?」


願っても降らんもんは降らん。





そして…………。





願っても手に入らんもんは入らん。
それが分かっとっても願わずには居られん。

無常にも、時間は止まることはない。


「侑士ぃ。」


突然背後から岳人の声が聞こえてきた。
何でここにいんのか知らんけど、一人で居たいなぁ。


「岳人……。」
「ちょっと黙って。俺の話し聞いてよ。」


我侭(わがまま)なやっちゃなぁ。

仕方なく無言で許可する。
岳人は俺の右側に座って、話を始めた。


「俺さあ、思うんだよ。」


神妙な顔で俺の相方はゆうた。


"男も女も沢山居んのに、みんな誰か一人を想ってるんだよなぁ。"


偶(たま)には、まともな事ゆうやん。
そう思いながら続きを聞く。


「だけどさ、それがいいんだよ。きっと。だってさぁ……。」


少しの間を空ける。
この次がたぶん、ホンマに言いたいことや。


「たった一人を特別に想うから、お互いにとって特別だから幸せなんだろ?」


言いたいことはよう解らん。
けど……。


「……おおきに。」


俯いて言う。

一生懸命励ましてくれてんのは嬉しいから。
お礼を言う。


「おう!」


元気な声が返ってくる。
一回も視線を合わせずに会話する。


「ホントに天気いいなぁ。」
「ホンマええ天気や。」


当たり障りがあらへん会話。
そこに気遣いが見える。


「そういや、この前告ってきた女の子どうした?」
「振ったわ。足綺麗やなかったし。」
「結構可愛い子だったのになぁ。」


小そう勿体(もったい)ねぇ、と呟く。
お互い様やんと、言い返す。
そないな会話を延々としとった。










「侑士、ケータイ。」
「ああ、鳴っとんなぁ。」


サブ画面に表示されたんは、俺様部長の名前。

あ、部活あんの忘れとった……。


「岳人。」
「何?」


全く解っとらん岳人の腕を引く。
なんだよ、と言わんがばかりにこっちを見とる。


「部活行かんと!!」
「あ、やべっ!!」


二人揃ぅて階段を駆け下りた。
階段の下には、たいそうお怒りの様子の跡部が居った。
表情が怒りに歪んどる……?


「忍足、向日……。」
「「あ、跡部……。」」





その後、二人の悲鳴が校内に響き渡った……。










それから何日経っても、何ヶ月経っても……。
俺との……。
そして俺と跡部の関係は、変わらず続いた……。















あとがき+++

爽やかにオチ。
久しぶりに短め。
ちょっと意味不明気味……(汗)
本当はもっとシリアスに終わる予定が、完全復活した跡部の出現により微ギャグオチ……。

慰めに来たのはガックンでした……。
ガックンが忍足んに向けてる感情は友情です!
恋心ではありません!!(←ここ重要)
私的には別にどっちでもかまいませんが(笑)

とりあえず、忍足んには立ち直ってもらわねば!

by碧種


03.12.14