ただ一度だけ君の事が好きだと言いたかった……










最初からわかっていた事。










ただ、好きなだけじゃダメだったんだ。

私にとっては君が一番でも、君には他に一番がいるから。
アキラが杏ちゃんを好きなことは誰もが知ってる。



だけど、私は神尾 アキラが好きでした。
テニスに一生懸命で、伊武にぼやかれてる。

そんな君が好きでした。

『リズムに乗るぜ!!』とかバカなこと叫んでる。

そんな君が好きでした。



私はずっとアキラばかり見てました。
アキラはずっと杏ちゃんばかり見てました。

私は好きだと知る前から失恋してました。
バカみたいでした。





それでもずっと好きでした。





時々私のことも見てくれました。
でもそれは、親友としてでした。
ハナから対象外でした。
アウト・オブ・眼中もいいところ。



「君が好きだよ。」



誰も居ない教室でポツリと呟く言葉は誰の心に届くこともなく、空気に吸収された。


ムナシイです。
フモウです。
ヤマナシ、オチナシ、イミナシです。(イヤ違う)


「ムナシ……。」
「何が虚しいんだ?」


突然掛けられた声に振り返ると、そこにはアキラが居た。
虚しい原因は君なんですけどね……。

その普通に話し掛けてくれる事すら、虚しさになるの解ってる?
君の優しさ全てが、私にとって虚しいものなの分かってる?
本当に、ワカってないよね……。


「別になんでもないよ。」
「本当か〜?」


心配そうに覗き込んでくるアキラの顔がある。
それすらも、私の溜め息を誘うばかりだ。

思わず溜め息をつく。
私だけ椅子に座っているので、アキラの顔が上の方にある。
アキラは私の方を見ているので、前髪が揺れる。
その隙間から見えるもう片方の眼も心配そうに私を見ている。
もう一度下を見る。


『君が好きだよ。』


机に肘をついて、手で顎を支える。
そんな状態で、口だけを動かす。


『君が好きなんだよ。』


喉を震えさせない様に、そっと思いを零す。
届かないと解っていても、叶わないと分かっていても止まらない。

アキラは、私が黙り込んだのだと思って言葉をじっと待っているようだった。

こんな卑怯なやり方で、願いを叶えてごめんなさい。


『君が大好きだよ。』


これっきりですから、言わせて下さい。
もう二度と、思いを口にしませんから……。


『君が好きだよ。』















+++++あとがき

鬼太郎……ではなく神尾君です。
またまた更新したのは悲恋です。
悲恋強化週間ではないのですが、悲恋しか書けなくなってます。

重症ですね。

自分で書いてて、この話は切なくなりました。
かなり切ねぇーー!!
このあとがきでぶち壊しですが(笑)

突発的ドリ夢〜。
最近そんなのばっかりですが、ね。
涙涙の更新です。
今度こそはハッピーエンドをっ!!

by碧種


03.09.26