計算なんかじゃ計り知れない
そんな想いが


ここにも在る










予測不可能










「好きです。付き合って下さい!!」
「へ?」


計算では予測できないもの。
それは人の心。
それはある日突然、人の身に降りかかってくる。

愛の告白とやら……。





って、あんた誰だ?





「君は……?」
「僕……ですか?」


そう。
私の行く手を塞いでいる君だ。
部活の定休日だから早く帰れると、鼻歌交じりで校舎を出ようとした私の目の前に突如現れた君だ。

気が弱そうな、見るからにもやしっ子の少年。
彼は名乗りもせずに『好きだ』とのたもうた。


「小山忠です。」


衝撃的だ。
が、あんたのことを私は知らんとね。


「小川くんとやら。」
「はい。」
「私は君の事を全く知らない。」
「そう……ですよね。」


ちょっとショックを受けたのか、少年は俯いてしまった。
でもまぁ、そんな事はどうでも良いんだ。

さっさとそこをどいてくれ!

私の思いは全く通じていないらしい。
まだまだやる気のようだ。


「あの……。さんが僕のことを知らないのは分かってます。」


だからなんだ、と言いたいところを抑える。

ハッキリ言って傍迷惑な事この上ない少年に対して、結構私は頑張っているんではないか?

などと考えながらも大してまともに取り合わず、聞き流している。


「だから僕の事を知ってもらおうと思って……。」
。」
「え?」


一生懸命演説している少年の背後に私の知っている人物が現れた。
というより、いつの間にかそこに存在していた。

我が校の名物ゴールキーパー(?)
その名も……。


「不破?!」


ユニフォーム姿で現れた彼は、小川くんとやらの横を気にする風もなく通り過ぎた。
大して焦る様子も無く、いつも通りに話しかけてくる。


「取り込み中に悪いんだが、すぐ来てくれないか?」
「え、ああ。全然構わないよ。」


ごめんね、と小川くんとやらを一瞥して不破の後ろについていく。










「んで、何のよう?」


連れていかれたのはグランド横。
用事を聞いてなかった私は、突然立ち止まった不破の背中に聞く。
私が聞いてから十分に間が空いてから言葉が返ってきた。


「別に用は無い。」
「はい?」


今まで以上に訳の分からない話だった。
何か急用でもあるんじゃないかと、一応心配して来たというのに……。

私は意味も無くここまで連れてこられたのですか?


「じゃあどうして、すぐ来てくれなんて言ったのさ。」
「……。」
「さあ、答えろ!」


また長い間が空きそうだったから、少し強引に出てみる。
すると、あっさりと答えが返ってきた。


が困ってたから。」
「それが理由?」
「ああ。」


どうやら不破は、私を助けてくれたらしい。

私はさっき確かに困っていた。
まぁ、よく分からない気もするけど、とりあえず……。


「ありがとう。」
「礼を言われるほどの事ではない。」
「でも助かったからさ。」


目の前にある背中を軽く叩く。


「それじゃ、また明日。」


挨拶だけして帰ろうとした。
次の瞬間、小さな声が聞こえた。


「見てるのが嫌だっただけだ。」
「え?」


振り返るといつの間にか不破がこっちを向いていた。
太陽光がもろに目に入って、瞬間的に怯む。
逆光で表情が見えにくい。


「俺が嫌だっただけだ。」


簡潔すぎる答えで、意味が分からない。


「何が?」
が告白されてるところを見ている事。」
「何で?」
が好きだからだ。」


その言葉を理解するのにたっぷり三十秒は掛かった。
互いに全く動かない時間ができた。

グラウンドから声が聞こえた気もしたし、誰か人が通った気もした。

だけど二人で固まっていた。


「マジで?」
「本気だ。」
「うっわー。驚きだ。」
「何だその反応は。」


ただひたすら驚いていると不満そうな声がした。

ごめん、と小さく謝る。
すると不破は言う。


「返事は?」


愛想のない言葉で、でも案外感情のこもった声で。
表情は全然変わってないけど、意外と必死だ。

私の返事は当然……。


「君に同じく、だよ。」















あとがき+++

笛!初挑戦です(汗)
しかもキャラが全然分かりません(なんせマンガを一回読んだだけ(泣))

長々とお待たせいたしました。
弦戯さん、ホントごめんなさい!
ああ、しかもこんなに中途半端な終わり方……。
変なところがあったらご指摘願います。

この夢は弦戯さんに捧げますので、持って帰るなり個人で楽しむ範囲内ならばご自由にどうぞ!
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by碧種

04.09.22